きっかけ - エッセイ書きはトライアル

Category: Gratitude / Lifelong Learning /

キーメッセージ: トライすること、練習し続けることの大切さ

きっかけ - エッセイ書きはトライアル

夏の間3ヶ月近くをカリフォルニアで過ごした娘が、ニューヨークに戻る日が近づき、急に話すことが沢山出てきた。来年夏の結婚式のカラースキームの話、博士課程の研究の話、ウォール・ストリートで時々開催しているワークショップの話。。。ニューヨークに戻れば、またフェイスタイムで、ちょくちょく話はするのに、あと数日の内に、話せることは全て話して置かなければならないような気がしてしまう。直に顔を見ていると、娘が随分大人になった事を実感しつつ、いつの間にか、話題は国際情勢にまで広がる。一通りのトピックをカバーしたところで、娘が、一冊の本を残して行くと言った。「読もうと思えば、数日でさらっと読めるし、一気に読まなくても、少しずつ気が向いた時に仕事の合間に読めばいいし、きっと気にいるタイプの本だから。」とのこと。それが、詩人でエッセイスト、Ross Gay著 の The Book of Delights だった。

ニューヨーク・タイムズのベストセラーにもなったこの本は、bite size のエッセイ集。詩人として活動してきたRoss Gay が、コロナのシャットダウン下で始めた「毎日の小さな喜び」を手書きで記録して行くプロジェクトが元になっている。行きつけのカフェへ足を運ぶ、近くの店に買い物に出る、帰り道に書店に立ち寄って雑談をする。。。そういう日常的な普通の行動の中で、気がついたり、見聞きしたことの中から、小さな喜びを見つけ書き留めるという、余り大袈裟でないプロジェクトと知って、気軽に向き合えそうなので、仕事の合間の気分転換に、1章づつくらいのペースで読むことにした。

前書きと各方面の書評専門家からの賛辞を読み、まずRoss Gay に会いたくなった。彼の行きつけのカフェで雑談でもできたら、何だかとても楽しそうだし、そんなことが余り無理で無いと感じさせる、さり気ない人となりを感じる。4番目のエッセイを読んで、ホッとする程、普通の人っぽいところがあることを感じさせてくれたのは、「毎日書く」ことをルールとして始めたのに、4日目には、書けない日があったことをすんなり打ち明けているあたり。それなのに、彼の目線、表現、言葉の選択がやはり尋常で無い才能を感じさせ、その根底にある彼の細心の気遣い、心遣いや情を感じさせる。

彼はこのエッセイを書き始めて、「喜びを見つけるレーダーを身につけ」「喜びを見つける筋トレをした」ような感じだったと前書きで語っている。そうか。。。喜びのエッセイを書き始めることで、彼は書く題材としての喜びを探すようになり、それが習慣化して、喜びをあちこちで見つけられるようになったのか。喜びの発見は、練習を重ねると段々上手になるのかも知れない。「バスケットボールのシュートと同じ!」と、ものすごく納得してしまった。コロナで人と会えなくなり、悲しいニュースが次々と入ってくるようになった頃、こういうプロジェクトを思いついて実行したこの詩人の姿勢には、感銘する。私も毎日の生き方の一つのヒントをいただいたようで、感謝の気持ちが湧いてきた。Ross Gay に会うことができたら、まずは、お礼を言おう!

Ross Gay の「喜び発見の練習とそれを書き留める日課」を知ったことがきっかけで、私もこれまでに少しずつ書き溜めていた取り留め無いエッセイ風の文章を推敲、書き増し、書き直しする気になった。そういう練習を重ねながら、少しずつまとめて行き、友人や知人に読んでいただこうかな、という気になって来た。Ross Gay 曰く、エッセイという言葉は、フランス語のessai から来ていて、その意味はトライすることなのだそうだ。「トライすること、練習すること」としてのエッセイ書きと考えると、急に心が軽くなり、日頃構えた姿勢でものを書きがちな自分から、少し脱皮できるような気がしてきた。また、自分の書いたものを公表することに躊躇しがちな姿勢を改めて、知り合いからフィードバックをいただくことが大切だと思えるようになった。

普段、イノベーション・リーダートレーニングの研修生には、コーチとして ”You have nothing to lose. Take risks as fast as you can as many times as you can. It is like practicing basketball shooting. Failure is not an ultimate failure, if you keep learning from it. That is the only way to get better!“ などと、勢いの良い激励の言葉を送っているので、自分自身もその言葉通り、練習をしなくては。こんなきっかけを与えてくれたRoss Gay に改めて感謝。そして、私の今のライフ・ステージに何が必要かを察したかのように、この本を勧めてくれた娘にも感謝している。

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