カリフォルニア・コンドルが翔ぶ青い空
コンドルが翔ぶ空@ピナクルズ国立公園
I'd rather be a sparrow than a snail
Yes, I would
If I could
I surely would…
と始まるサイモン&ガーファンクルの El Condor Pasa (If I Could) は、スポティファイのプレイリストが登場するずっと前から、何となく私のプレイリストに含まれていた心に滲る大好きな曲。メロディーも歌詞も、比較的ついて行き易いので、高校生くらいの時には、英語学習(と言っても、勉強のつもりでは全然無かったが)の格好の教材にもなっていた。英語の歌が歌えるようになると、自然と発音が良くなること、発音が良くないと歌が歌えないことには、後日気がついて、英語の発音で悩んでいる方には、英語の歌を楽しく歌いながら自然と発音を改善する方法をよくお勧めしている。
中間の山場で、
Away, I'd rather sail away
Like a swan that's here and gone
A man gets tied up to the ground
He gives the world its saddest sound
Its saddest sound
(歌詞出典:Musixmatch)
というくだりになると、10代でこの歌に出会った時から、今でも変わらない胸にグッと迫るものを感じる。束縛されず、自由に生きたいという気持ちを、さらっとこういう雰囲気で歌詞に綴ることができるポール・サイモンには改めて敬服。また、ガーファンクルの限りなく美しいボーカルは年月を経て、今でも同様に魅了してくれる。
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シリコンバレーから車で南東に2時間も掛からないサリナス・バレーの東に、アメリカの国立公園の中では、最も新しい(最も最近認定されたという意味の新しさ)ピナクルズ国立公園がある。世界的に有名で大人気のヨセミテ国立公園や、セコイア国立公園、キングズ・キャニオン国立公園と比べると、施設も雰囲気もかなり地味で、知名度も低いが、実は様々な見どころがある。2300万年前の火山の噴火が創り上げた地形に沿って、洞窟、崖、草原と変化の多いハイキング・コースが数多く整っている。
この国立公園の目玉は、何と言ってもカリフォルニア・コンドルだろう。1970年代には、確認された生息数が22まで減ってしまい(一説には、10まで減少)、絶滅の危機に直面したカリフォルニア・コンドルは、その後の保護活動で、現在500以上が生息しているという。農業用害虫駆除剤に含まれる毒物や、狩猟で使われた弾丸の鉛が、カリフォルニア・コンドルを絶滅の危機まで追い詰めた。保護活動の方法については、人間の力無しには存続できないコンドルにしてしまうことへの懸念など、様々な議論がされ、意見の対立もあったらしい。人間の活動、自然の破壊、人間による保護活動という振り子が揺れる歴史の中で、私たちの今の選択はどうあるべきか、また考えさせられてしまう。
翼幅が3メートル近い北米大陸最大のカリフォルニア・コンドルが、地面から隆起しているように見える、ドーム型の岩(ピナクル)の崖上空を翔ぶ姿は、朝方や夕方に見られることが多いと聞いた。時刻は午後4時。時間的には少し早いが、上掲の写真の崖の下で、辛抱強く待っていると、運良くも3羽のカリフォルニア・コンドルがゆったりと、8の字を描くように姿を見せてくれた。この気前の良いデモンストレーションに感激して、ビジターセンターのスタッフに報告すると、優しい笑顔を返してくれた。サイモン&ガーファンクルのEl Condor Pasa (If I Could) の世界に浸ったような1日の終わりの願いは、一つ。「コンドル達よ、人間に頼りすぎず、束縛なく、自由にこの青空を翔び続けて欲しい(If You Could)」。