ヒューマン・コネクション【2】
人生の転機となったひと言
Sunday, October 6, 2024
1. 人生とは驚きの連続
ふと振り返ると、これまでの半生を4か国、20都市で過ごしてきたことに気づきました。
これまでの経験を通じて感じたことは、(1)人生には自分でコントロールできることと、できないことがあるということ、(2)未来は予測できないけれど、ちょっとした先の出来事を仮説立てて備えることができるということ、(3)大きな成果を上げるには時間がかかり、毎日の積み重ねが大切だということ、(4)予想外の出来事が起きたときにどう対処するかが、その後の結果を大きく左右するということ、そして(5)結果は重要だけど、それまでのプロセスを愉しめるか、苦しむかで、最終的な成果にも大きな違いが出るということです。
人との出会いや、ふとしたひと言が、人生を大きく変えることもあります。
そのような経験をしたのは、今から18年前のことでした。
社会人10年目の節目に決断したアメリカ留学。その決断に至るまでには6年もの時間がかかりました。自分の中で迷いがあり、すぐに決断できなかったのです。
そんな中、アメリカ留学では、自分が不足している知識やスキルを貪欲に学ぼうとしました。
入学式で、学長から発せられた言葉に、強い衝撃を受け、”はっ”とさせられたことは今でも鮮明に覚えています。
285人の新入生に向けられた学長からのメッセージは次のようなものでした。
“今から2年後、卒業を迎えるとき、「自分はここでこのコミュニティに対してどのような足跡を残すことができたのか?」それぞれが胸を張って言えることが一つでもあって欲しいと願います。卒業後もアルムナイとしてコミュニティのメンバーとして繋がるみなさんにとって、どのような足跡を残し続けることができるでしょうか?”
これまで、あまりにも長い年月をかけて留学を志しては、時には心折れそうになり、留学を断念する考えが何度もよぎった中で、掴んだチャンス。
もう頭の中は、”あれも”、”これも”、と欲望の塊で埋め尽くされていました。
そこで投げかけられた「自分はここで何を残せるか?」という学長の問い。
自分は、得ること(take) しか視野になく、与えること(give)の視点がぽっかりと抜けていることに気づかされたです。
時計の振り子が真逆に振り切れるように、その日から、自分がこの学校のコミュニティに、どんなことが残せるかを、色々な軸で探求し、実践する日々が始まりました。
学生時代には、コミュニティにおけるアジアにおけるプレゼンスの向上のために、アジア人としてリーダーシップを発揮する機会を掴んだこと(elected Vice President at International Business Association)、そしてUNCの出願を検討しに世界から訪れるアプリカントへのサポートを1生徒として手を挙げ、アドミッションを支援するポジションを得たことなど(elected Admissions Advisory Board member)。
それから2年後
これまでの無心の取り組みが認められ、卒業式で、チームワークの価値を最も体現した生徒に贈られる「Core Value Award」を受賞しました。
卒業式 Core Value Awardを手に (自宅にて)
2008年5月11日
僕の2年間の学生生活を変えてくれた学長に直にひと言お礼が言いたかった。
その願いは叶わなかったのは、在外中に学長は任期を終えられ退任されていたからです。
それだけが学生時代の心残りでした。
2. 人生は驚きに満ちている
卒業して4年半が経った頃、私は上海の会社に駐在員として勤務していました。そこは、私が卒業後に縁をいただいた会社の海外拠点です。
そんな中、母校のアルムナイレセプションで驚くべき再会がありました。学長にお礼を直接伝えることができ、その瞬間の感動は今でも鮮明に覚えています。
学長との再会 -
アルムナイレセプションにて(上海)
2012年10月11日
その後、中国に駐在している間、アルムナイ面接官として学校のコミュニティに貢献する機会を得ました。
さらに、3年間の駐在生活を終える頃、学校からの連絡で、私の在学中や卒業後の功績をサイトで取り上げたいとの依頼を受けました。
インタビューを経て、掲載された記事がこちらです。
3. 人生は本当に興味深いもの
その翌年、日本に帰任した私は、世界初の人型ロボットのグローバル展開に向けて日々奮闘していました。
そんな中、在学中にお世話になった教授から、Japan Tripで企業訪問を希望する在校生たちがいるとの連絡を受けました。そして、その中に学長の娘さんが含まれていたのです。
UNC meets Pepper in Tokyo
2016年5月26日
娘さんは私にこう言ってくれました。「学校の記事を読みました。父のことを取り上げてくれてありがとうございます。」
上海で学長に直接お礼を言うことができたものの、今回ホストとして娘さんや他の在校生を楽しませることができたことが、学長へのさらなる恩返しとなったと感じました。
学長の娘さんからのお礼のメッセージ
2016年5月26日
日本帰国後もアルムナイ面接官としての活動を続け、在学時に100名だった日本人アルムナイネットワークも、現在では200名規模にまで成長しました。
人生は予測できない展開があってこそ、面白さが増すものです。
自分の描いた通りにいかない人生は、味気なく感じるかもしれませんが、思い通りにならないことこそ、私たちが努力し、新しいものを生み出す原動力になるのではないでしょうか。
これまで出会ったすべての人々への感謝の気持ちは尽きません。
今後も、私は人と人、人とアイデア、人とビジネスを結びつける役割を果たし、天職としてこの道を進んでいきます。